私はこれでもバスケ部のマネージャーだ。
敏腕マネージャーなのである。

「ナイッシュー」

体育館に響くバッシュの音、ボールのバウンド音。

「今日も平和だなァ…」
「せ、ん、ぱ、ぁ、いーっ!!、」

うわ出た。
バスケ部の若きルーキー、高槻 裕翔
(たかつき ゆうと)だ。
オレンジ色の髪と綺麗な瞳。
一言で言うと、猫。ただ、少し……

「やっべぇ先輩今日も今日とて可愛いっす!笑って!フォーっ!!!」
「…」
「無言もぷまい!」

…変態である。

なんと言うか、馬鹿である。
何フェチ?とか聞くと幽先輩フェチ!って答えるくらいには馬鹿である。

「…練習は?」
「ヤダな。先輩!今、休憩っす!」

うわぁあ…
私は露骨に態度に出す。

こっちみんな。

「カーすか先輩ッ!」
「何?」
「可愛いっす!」
「………照れるからやめなさい」
「いやいやぁ…」
「て言うかなんで同い年なのに先輩なの」
「え、だめっすか?」

私は良いけど…と返す。

「先輩じゃないし。」
「……いーんすっ!気にしないで欲しいっす!かわいいなぁ!」

かわいくないもん、とそっぽを向いた。

「〜ッ!もん、とか!かわいすぎるっつのって…あ、ヤベ、鼻血。」
「あっちいけ変態。」

先輩になら先輩って呼ばれてオッケィ!と裕翔はいい笑顔をした。

いい笑顔しないでほしい。

「にししー…かすか先輩」
「…先輩じゃないから。」
「俺、尊敬する人は先輩ッて呼びたいんす!!」

他の人もよんでるの?と聞くと、いーえ!と返された。

「…ヤキモチっすか?なんて」
「違うし。うん、絶対!!!」

私はかぶりを振って否定する。

「やべ、わかりやすい…」
「……なんか言った?」
「いーえ!…あ、練習戻るっす!」

はいはい、行ってらっしゃい、と私は笑みを零した。