タダノトッキ

ファンタジー

モレラ/著
タダノトッキ
作品番号
1186985
最終更新
2015/03/11
総文字数
1
ページ数
1ページ
ステータス
未完結
PV数
2
いいね数
0
小鳥のさえずりで目覚めた。8月の半ばだが、室温は26度。
クーラーはただのお飾り。過去の遺物と化している。ビルと
いうビルは緑に覆われており、ここが東京かと誰しも目を疑う
光景が前面に広がっている。ビル群に寄生しているのは、
「伝導蔦」だ。奴らは、太陽光線を求めて上へ上へとはびこり、
我々に電力を提供する。

MOOCが各国に広がりつつある2014年。
憲法改正で揺れる日本は、武器に関する一切を放棄。貧困地帯、
紛争地域や難民を抱えるありとあらゆる場所に、教育の場を与える
べく、無償でオンライン機器等のハード面の設備を整えた。
高等教育に限らず、小中高生のための、ソフト面も各国と共同で
カバーした。理由はただ一つ。優秀な人材の発掘にあった。資金を
出す代わりに、MOOCによって大発明や発見があった場合、その
インセンティブを受け取るという条件をつけて。
その結果得たのが「伝導蔦」である。

ある閉鎖された少数部族を病が襲い、長老は生き残った少年を
道に迷い集落にやってきた男に預けた。男は農夫だったが、
少年はMOOCによって学び、部族の周辺にのみ生息する
「タダノトッキ」後の「伝導蔦」を世界に紹介。エネルギー開発の
研究に一役買ったのだった。当時は集落の位置も把握できず、
「伝導蔦はない」とまで否定されたのだが、冒険家たちやマニアックな
人々、果ては企業までが、こぞって集落の位置をつきとめようとした。
そうして見つかった「伝導蔦」は各国の大学が競って品種改良を行い、
その結果、この特異な植物は太陽がある限り、永久に電力の供給を人類に与え
続けることに至ったのである。

コーヒーをすすりながら、ぼんやり外を眺めていると
高層ビルの窓の外から、「遅刻するぜ」と声がかかった。
Google 社製の小型一人乗りヘリに乗った男が笑いながら
通り過ぎた。その男の顔は、自分と瓜二つだった。

「チッ、この間、最新ホログラム・アバターを買ったばかりなのに
 もう出回ってるのかよ」

この作品の感想ノート

この作品には、まだ投稿されていません。

この作品のひとこと感想

この作品には、まだ投票されていません。

この作品をシェア

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

pagetop