これからどうしようかと考えて、私の頭に浮かんだのは、
城外に広がる草原を風のように馬で駆けていく光景だった。

(……この町を離れてみるのも良いかもしれない。
 今まで一度も出た事のない、町の外へ)

私は、これまでもよくお城を抜け出して城下町を探索していたけれど、
城下町の外へ出た事は一度もない。

(それなら馬が必要よね。
 確か城下町のどこかに馬屋があった筈……探してみましょう)

――私は、馬屋で一人の黒髪の少年と出会う。
――危ないところを助けてもらったお礼に、恩返しがしたいと、私が告げると……

黒髪の少年
「……本当に、何でも良いのか?」

アイリス
「ええ、私に出来る事なら」

黒髪の少年
「…………」

少年が自分の手を口元に添える。
どうやら何か考えているようだ。
しばらくして、やっと少年が口を開いた。

黒髪の少年
「それなら、手伝って欲しい事がある」

アイリス
「どんなこと?」

黒髪の少年
「俺は今、あるモノを捜している。
 それを捜すのを手伝って欲しい」

アイリス
「捜し物?
 何を捜しているの?」


黒髪の少年
「…………宝物だ」

――少年は、名を【琳 楊賢】と言った。
――宝探しをすることになった私たちは、一緒に冒険をするうちに、少しずつ打ち解けていく。

アリス
「……ねぇ。
 楊賢くんって、年はいくつなの?」

楊賢
「十になる」

アリス
「じゅ、10歳?!
 ……ほ、本当に?」

楊賢
「見えないか?」

アリス
「ううん、見える。……外見は。
 でも、言ってる事や雰囲気がまるで子供らしくないんだもの」

楊賢
「……残念ながら、十歳なんだ」

アリス
(どういう意味だろう?)

――見た目とは裏腹に、賢くて大人びた雰囲気を持つ楊賢くん。
――自分に出来ないことがあると、それが許せないみたいで……

アリス
「仕方ないわ、まだ子供なんだもの」

楊賢
「子供である事を出来ない理由にはしたくない」

アリス
「そんな事言ったって、子供は子供よ。
 もっと甘えたら良いのに……」

楊賢
「……うるさいっ、お前に何が解る!」

アリス
「!?」

楊賢
「俺は……俺は、駄目なんだ。
 このままじゃ、俺は……!」


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