塚本さんに向き直り、頭を下げる。

「『ホワイトデー』ありがとうございました!」

「うん」

塚本さんは、いつもの穏やかな笑みを浮かべた。

「お先に失礼します」

小さく頭を下げ、向きを変えようとしたら、不意に塚本さんに腕を掴まれた。

「えっ!?」と、声を上げる間もなく塚本さんに引き寄せられる。

私の耳元に口を寄せて、その低い声で囁いた。

「今日渡したの、身に付けてる時は、教えて」

「はい・・・」

私は、小さく頷いた。

サッと体を離すと、塚本さんは、唇の片端を上げて「ニヤリ」と笑った。

「お疲れ!」

右手を軽く上げると、何事もなかったように塚本さんは行ってしまった。

残された私は、そっと右手で胸を押さえる。

心臓のドキドキが止まらない。