その日は、毎年少し憂鬱だ。

出勤して、いくつかチョコをいただく。

それは、まだいい。

取引先に出向けば、やはり、チョコを渡されてしまう。

例え、どんな雰囲気で渡されようが、貼り付けた同じ笑顔、同じ態度で受け取る。

外で渡されるチョコは、全て『義理』。

そう決めつけて、そういう態度で接する。

俺のそんな態度に、落胆した様子を見せる女の子もいるが、これから先、少しでも気まずさを残したくない俺の精一杯だ。

3月に入ると早々に、現金と、予算や数を書いたメモを母親に渡す。

就職してから、義理チョコ ( と決めつけている ) のお返しを考える事を、俺は放棄していた。

「一緒に選んでくれる彼女はいないの?」

毎年、呆れられながら同じ事を言われる。

彼女がいた時も、それを頼む事はできなかったのだが・・・

「私の分も一緒に買うからね」

もらってもいないチョコのお返しを要求され、自分用に、一番いいヤツを買う。

まっ、自分で準備する事を思えば、安いものか。