「おつかれさま」

あっさっきの強引な人…。

「お、おつかれさまです」

「吉岡さんさ、子役とかやってた?」

「いえっ全くやったことないです」

「……ふーん?」
「なんでですか?」
「…いや特にないけど。まあいいや。
あのさ、ちょっと話があんだけど、
いい?」

な、なんだろ…

「吉岡さんうちの劇団に入る気ある?」

……?
えっ、何、スカウト!?

「あっ、あの…どうして……」

「はぁ? どうしてもこうしても、お前の演技がよかったから。それ以外に何の理由があんだよばかじゃねえの」

ばっ、ばか…ですと…
ずいぶんとはっきり言うなぁ…

「あのですね、私、お恥ずかしながら、
家計の状況が芳しくなくってですね、
演劇に打ち込んでなんかいられな」

「金なら問題ない」
「え」
「俺が面倒見てやるよ。あ、俺ちなみに
この劇団さざなみの団長だから」
「は、はあ…」

信じていいのかなぁ。
でもさっきみたいな演技をするだけで
お金が入るなら、それもいいかも…。

お父さんもゆっくり職探しできるし、
一応はビンボーな生活から脱却できる!

うん、いいかもしれない…

「あっ、あの!吉岡マチ子、17歳です。ふつつかものですがどうぞよろしくお願いしますッ! 頑張ります!」

私は深々と頭を下げた。

成り行きで全部こんな風になっちゃったけど、とにかく頑張るしかないってことは私にもわかる!
がっ、頑張ろう!!