「ごめん六郎。…みんなもすまない。
スランプだったんだよ、僕」
「わかってる。だからどんな脚本でも
俺達で修正して、役者の力で何とか
乗り切ろうってしたんだろ。
でも今回この劇団自体が、一体となって
たかよ? なってねえだろ?
挙句にヒロインが逃げ出す始末さ。
こいつ、吉岡のおかげでどうにかなった
けどよ。この舞台《キリサメ》は
はっきり言って劇団さざなみの失敗作
なんじゃねえの?」
…そうだったんだ…。
私も最初は劇団の規模の大きさに
驚いてたけど、やっぱり集団が
結束するって大変なんだよね。
たしかに皆さん、どこか気持ちがない
というか、そんなところがあったな…
「みんな、すまなかった…!」
笹島さんは深々と頭を下げた。
すると六郎さんが肩をぽんとたたく。
「もういい。終わったことなんだから
いつまでもクヨクヨしたって仕方無い。
だったら、次は頑張ってくれよ。
俺も、頑張るから」
あ、優しい…
思わずどきっとしちゃった。
よく見ると六郎さんって背が高くて
芸能人みたいにかっこいい。
包容力あって大人な人だなぁ…

