上がってすぐの部屋にその人の後ろ姿は見えた。
一瞬消えた喧騒。
中の障子が取り払われ広間となったそこにはむさ苦しい男ばかりが二十人程集まっていた。
入り口近くにはさっきの男が倒れている。斬られた様子はないから恐らく近藤さんが殴りでもしたんだろう。
仁王立つその人の横をすり抜け中に入ると、糸を切ったように暫しの静寂が破られた。
「うわあぁぁっ!!」
顔を見るなり一直線に斬りかかって来た男を抜刀の一振りで斬り伏せる。
短く聞こえた悲鳴。
こうして少しでも楽に逝かせてやるのが私の情けだ。
勿論長引けばそれだけ体力も奪われる。どうしても体力的に男に劣る私はこうする他に戦い方がないのだけれど。
でも、やっぱりじわじわいたぶるのは趣味じゃありませんっ!
つい思い出したあの拷問を頭から追い出し、次に襲ってきた男を逆袈裟に斬り捨てる。
同時にガチャンと何かが倒されて、部屋は闇に包まれた。
突然の暗転に意識を研ぎ澄ませば、別の方向にあった吹き抜けから男達が次々と下に飛び降りて行くのがわかる。
不味い、このままでは下が。
平助達がいるとはいえ、これだけの人数を逃がさず相手するのはまず無理だ。
だからといってそう易々と逃がす訳にもいかない。
「近藤さん、此処は私に任せて下へ!」
斬りかかってこようとする気配は一つもない。
こんな腰抜け共の相手、私一人で十分です。


