飼い猫と、番犬。【完結】



何でよりによってこんな日に……。


間の悪さを呪っても仕方ないのだけれど、これが呪わずしていられようか。


他の隊士達には絶対にない、月一のアレ。


いつもなら頭二日は非番にしてもらうのだけど、今日ばかりは流石に言い出せなかった。


隊士の稽古をも任されている副長助勤が、この大捕物になるだろう討ち入りに参加しないなんて許されないのだから。


詰め物にお馬(女性用の褌のような物)は当ててはいるが、正直あまり派手な立ち回りはしたくない。


腹も重い。いつもと比べれば体調だって万全とは言えない。


故にこっちの隊だと聞いて喜んだのに、変なことを願わないで欲しい。



……まぁ大丈夫ですよね。



あくまで本命は向こうでこちらは予備隊に過ぎない。あの土方さんが向こうだと言うならそっちなのだろう。


私達は池田屋を確認して四国屋に走る。そして逃げ出そうとする奴らを捕縛すれば良いだけ。




暗い夜道。


ふと生ぬるい風が私達の背を押すように通りを抜けていき、浅葱の羽織がひらりと靡く。


僅かな明かりでも敵見方の区別がつくようにと、久々に皆で袖を通したそれが少し暑い。


念には念をと、灯りのついた旅籠を一軒一軒改める近藤さんのあとに従って。


私達は三条を目指した。