飼い猫と、番犬。【完結】



私達が動くことを悟られないようにとばらけて向かった祇園の会所。


話は通してあった筈なのに、定刻を過ぎても現れない奉行所や所司代に業を煮やし、陽が完全に落ちるのを待って、私達は先に捜索を始めることになった。


近頃見なかった山崎は意外と真面目に働いていたようで、あいつを含む監察方のお陰で場所の目星はついているらしい。


候補としてあげられたのは二ヶ所、三条にある四国屋と池田屋。


どちらも攘夷論を強く唱える長州の奴らもよく出入りしている旅籠だ。


池田屋は元々長州贔屓で有名、流石に今回はそんな所は使わないだろうと、本命は四国屋に。


そこを二手に分かれて捜索する。


四国屋へは土方さん以下二十四人、池田屋へは近藤さん以下十人。念の為後者は私を含む少数精鋭でことに当たることになった。






「わくわくするねーこっちが当たりなら良いのに」



隣を歩く平助はこういう時、凄く生き生きする。


やる気があるのは良いけれど、斬り合いになるかもしれない場面でそれはどうなのか。


「そんなこと言ってるとバチが当たりますよ」

「そうだぞ平助、また餓鬼にあっち行けって石投げられっぞ?」

「う。ちょっとやなこと思い出させないでよね、あれ地味にキツかったんだから」


後ろからこつりと頭をを叩いた新八さんに、平助が口を尖らす。


いつもは左之さんを入れて三人、馬鹿みたいなことばっかやってるのに、流石に年の分だけ大人だ。



まぁそれに……私には向こうであってほしいと思う理由が別にある。