飼い猫と、番犬。【完結】



「それはどうも。でもそんな下手な小細工など必要ありません。どうしてもの際は平助か一くんに頼みますから貴方は気になさらずとも結構です」


此処なら常に帯刀もしているし、平隊士であれば返り討ちにする自信はある。


それに牽制なら何もこいつでなくたって良い。二人には悪いですが最悪男色の皮を被ってもらいましょう。


言いつつ、実際にそんな噂が出た時の二人を想像して堪らず表情が緩んだ。



「悪いやっちゃなー」


けれど意地悪い笑みで見つめてくるそいつにまた眉が寄る。


どう見ても山崎の方が性根がねじ曲がっているだろう。


「あの二人には遠慮するなと言われてますから良いんです」


私が日野を出るのに最後まで反対して、同じ部屋になることで一応の良しをくれた平助。


偶然こっちで久し振りに会ったのに一緒に巡察に出ると然り気無く僅かに前を歩いてくれる一くん。


他の人以上に気を使ってくれる二人だからこそ、もしもの時は頼らなければ逆に怒られてしまいそうだ。



「そーゆー意味やないねんけどなー」

「……? ならどういう」


つまらなさそうに半目になったそいつに同じく瞼が下がる。


「わからんかったらええねん。それよか他にもっとええのんいてはるやん、皆怖ぁて手ぇ出そやなんて思わへんで? 相手がほら、土方副長やったらな」


けれど次の瞬間、舐め上げるような視線で発せられたその言葉は、簡単に私の意識を浚った。