絶対嘘だ。


こいつと恋仲だと言う噂が広まることに一分の利点も見いだせない。


寧ろ物凄く危険な臭いがする。


「まぁそないな顔せんととりあえず聞きぃや。その話の大元の奴等は自分襲おうしとってんで?」


襲う……襲う?


「は?」


だけどもぞりと布団を被ったまま起き上がったそいつの言葉を反芻すると、思わず声が漏れてしまった。


「まぁそいつらはもーおらんけど、そーゆー輩に襲われたら困るん自分やろ? せやさかいちぃと脅しといたってん」


俺って優しーと調子に乗っている山崎は置いといて。


『気を付けて?』


私はこの前平助が言っていた言葉を思い出していた。


……そー言われてみれば近頃話しかけてくる連中が何となく減ったような……?


こいつといたら平隊士は皆そそくさとどっかに行っちゃいますし……一体何の嫌がらせかと思ってたんですけど、もしかしなくてもその噂の所為ですか……。


最近の此処での様子を思い返すと頬が引きつり、小さく溜め息が零れた。


納得はしたけど承服は出来ない。


例え上辺だけであっても認めてしまえばそういう風に振る舞わなければならない場面もあるかもしれない。


こいつ相手にそんなの御免だ。