うちは隊規で夜間の無断外出は禁止されている。副長に了解を、ということは何かしらの仕事だったのだろう。
別にこいつを稽古に引っ張ってって叩きのめしたいとかは本来の目的じゃないから何とか心の内に留めておくとして。
ぐいぐいと互いに布団を引っ張り合いながら、どうしても聞きたいその質問だけをぶつけた。
「……妙なことて?」
すると強く引かれていた手が止まり、布団からそいつが顔だけを出す。
亀みたいだ。
「……私達が恋仲だと。貴方が言っていたと聞いたのですが?」
ついに落ちたとか、やっぱり男色だとか、絶対私が女役だとか、その他色々。
朝っぱらから下衆い妄想を繰り広げていたあの隊士達を思い出すだけで虫酸が走る。
殴ってやろうと拳を握り締めたところで『本人が言っていたらしい』の言葉だ。
私は言ってないし言う筈もない。ということは犯人はこいつしかいないだろう。
どうせあいつ達を口止めしたってもう話は広まっているだろうし、元を断たねばまた妙な噂が出るかもしれない。
それだけは阻止しなければ。
「……へぇ、ようやっと自分の耳にも入ってんな」
にやりと口角をあげるそいつは間違いなく確信犯だ。
「やっぱり貴方ですね! これ以上根も葉もない話を流したら」
「ええー俺は自分の為や思て言うたったのにぃ」