唯一動かせた首から上を思い切りしならせて、額をその顔にぶち当てる。


例え避けられてもこの拘束が解ければそれで良いと思ってのことだったのに、これがまた思いの外綺麗に奴の鼻に直撃した。


……ざまぁみろ。


「ちょ! 折れたらどーすんねんっ!」

「万々歳ですよ」

「酷っ」


直ぐ様私を解放して涙目で顔を押さえるそいつを見ると今までの鬱憤がちょっとだけ晴れた。


少しくらい痛くたって満足だ。


すりすりと額を擦りつつ横目で山崎をよく見ると、寝間着は寝乱れはだけているし髪はいつにも増してボサボサ。


若干寝呆けていたからこんな頭突きでも一発食らわせることが出来たのかもしれない。


てゆーか褌見え過ぎ。


まぁ無頓着な男ばかりに囲まれている今、それくらい慣れたものですけどね。


「もぉ虐めんねやったら帰って。俺さっき帰ってきたばっかやさかい、もーちょい寝る」


だけど、犬か何かを追い払うような仕草で手を振り再び布団に潜り込んだそいつに拍子抜けした。


別に突っかかってこられることを望んでいた訳じゃないけど、あまりにその反応があっさりし過ぎていたから。


……って、そんなことはどうでも良いんですよ!


「駄目です! 稽古はどうするんですかっ!」

「えぇのー副長に了解もろたぁる」

「じゃあこれだけ! 貴方、此処で妙なこと吹聴しているでしょう!?」