それを耳にしたのはある晴れた朝のことだった。


少々朝の弱い私。


それでも今日は澄んだ空気と明るい日差しに高い空を見上げ、気持ち良く井戸に向かったのに。


先にいた隊士達がさも楽しそうに話していた言葉に、朝の清々しい気分が一変した。


……、はい?


聞いて、理解して。


目をしばたたかせて呆けたのも束の間。


建物の影にいた私は疾風の如く踵を返し、ある場所へと駆けた。






──スパンッ



「山崎さんっ!!」



勢いよく木戸を開ければ、二畳程の狭い部屋中では布団が人形に膨らんでいる。


まだ寝てるしっ!


もう早い者なら朝の稽古を初めている時刻。いつも最後に稽古場に入る私より遅いということは、間違いなく遅刻だ。


叱られるのはこいつだし起こしてやる義理もないが、今はさっきの話を詳しく聞かねばならない。


「起きてくださ」


思い切り眉間を寄せて仕方なくその布団に手を伸ばした瞬間。


「おはようさん」


中から突然現れた手に手首を掴まれ、強引に引き倒されてしまった。


「なんなん、寝込み襲いに来てくれたん? 総ちゃん朝からえらい積極的ぃー」

「なっ!?」


腕と脚でがっちりと捕まえられてしまった体は全くと言って良い程身動きがとれない。


体温と極上の笑みが恐ろしく近くて、つい感情そっちのけで耳まで熱くなってしまった。


「ちょ! 違います!ってか放し」

「ひやこい体して。しゃーないなー俺が暖めて」

「んで良いっ!!」

「ぶっ」