時刻はまもなく五時。
学内にある図書館も閉館を前に大分人もまばらになり、あたりは閑散としていた。

そんな中、椅子に座った俺はすぐ側にあるコピー機の前に立つ奏をぼーっと眺める。

ついてきただけの俺にとって待っているというのは只々退屈なだけの時間だった。


「……そろそろ閉まんで?」

「すみません、ここコピーしたら最後ですから」


なにやら小難しそうな歴史の本。
それをセットした奏がこちらを向くこともなくボタンを押すと、隙間から眩しい黄緑色の光が漏れた。

出てきた紙をじっと眺め、よし、と呟いたそいつは机の上にそれを置き、代わりに高く積まれていた数冊の本を手に取る。


「とりあえず終わり! ちょっとこの本返してくるんで待っててください」

「んにゃ、俺も行く」


一人で待っている方が暇だ。

その手にあった重そうな本の束を奪うとずらりと並ぶ本棚の奥へと足を向ける。
日本史関係の棚は中でも部屋の隅にあった。

それくらい持ちますというそいつの言葉を軽くあしらい、半ば強引についていく。

いつものことに諦めたらしい奏は、辿り着いた日本史関係の本ばかりが並ぶ本棚の前に来ると、俺の手から数冊ずつそれをとって黙々と片付け始める。

窓の外は既に夜へと向かい始めていて。
既に周りには俺たち以外誰もいなくなっていた。