車で来てくれるって言うからさっき呼んどいたんですよねーと微笑む彼女に頬が引きつる。


さっきって、さっきやろ?にしちゃー来んの早過ぎやろ!間違いなくどっか近くにおったからなそいつら。


なんて言葉も俺を睨む連中から漏れる殺気に掻き消された。


見た目こそ普通――寧ろそこそこ整ったそいつらだが、どこぞのチンピラよりもよっぽど怖い。


「それは妹が世話んなったな。あとは俺たちが連れて帰るからもう良いぞ」


一番年上と思われるにいちゃんが迫力満点で微笑む。テレビの向こうにいてもおかしくないくらいに男前なその顔は、きっともっと別のことに使った方が良い。


じゃあまたと、笑って去っていく彼女の行動が全てを理解してのうえなら女というのは心底恐ろしい生き物だ。



ぽつん、と雑踏に残された俺。


春の夜、まだまだ冷たい風が脇を通り過ぎた人間と共にひゅるりと横を吹き抜けていって。
漸く、ふつふつと悔しさが湧いてきた。


……おもろいやないかい。


何事も難しいものこそ俄然やる気が湧くというもの。


彼女に特別な感情を抱いたという訳ではなかったのだが、こうなりゃ意地でも落としてやりたくなるのが俺の性分だった。


取り敢えず連絡手段は手に入れた。
大学も同じ。
勝算は、ある。



見てろやあのシスコンどもめ。


これが、俺達の新たな物語の幕開け――……