妾の子として生まれた俺は家族の繋がりというのがどういうものなのか、いまいちよくわからなかった。


母も早世し、俺に唯一それらしい愛情を傾けてくれたのは総司だけだったから。


けど、確かにこの親子を見ているとそこにしこりがあるようには見えなかったし、何より彼女のその言葉が俺に対して不満なんてないと伝えようとしているのだけはわかる。


わかるから、泣きそうになる。


「無理強いはしません、お辛いのでしたら此処を出てもらっても構いません。ですが父も私も、貴方には本当に感謝しているのです。ですからどうか遠慮だけはしないでくださいね」


それでもはいとは言えなかった。


何人もの人を斬った。仲間だって見捨てた。
そんな俺が一人安穏と生きるのは許されないことだと思っていた。
贖罪し続けなければならないのだと。


けれどそんな思いに反して、再び俯いた俺にも変わらない様子で穏やかに話すその人の言葉が沁み込む程に、ほんの少し心が軽くなるのを感じてしまう。


生きていても良いのだと言われたようで。
総司にこの背を押されたようで――


泣きたく、なる。










「さあ、じゃあそろそろ朝餉にしましょうか」

「……はい」



まだ、答えは出なかった。
それでも此処にいれば、いつかその答えが出るような気がしたのは俺の勝手な希望なのだろうか。


生きることはある意味死ぬよりも辛いことなのだと、今なら思う。


けど、 いつまでもうじうじと悩み続ける俺を見たらやっぱり総司は心配すると思うから。


俺は、もう少しだけ前を向かなければならないのかもしれない。