眩しい朝の日差しに目を細めながら、どこかで鳩が鳴いているのを何となく聞いていると、ふと足音が近づいてきた。


「あ、平助さん、おはようございます。もう起きてたんですね」


そう言ってにこやかに声を掛けてきたのは行く宛のなかった俺を拾ってくれた爺さんの、今年十八になる一人娘だった。


幼い頃に母を亡くしたらしい二人暮らしの彼らに世話になりながら、足の悪い爺さんを手伝い畑仕事に汗をかく毎日。


何度も出て行こうとしながらも、結局人の良い二人に甘える形で此処に居続けもう一年以上が過ぎていた。


それでも尚、後ろめたさに心苦しくなるのは変わらなかった。


俺は、この人が苦手だった。


この人の笑顔はどこか彼女を……総司を思い出させたから。




「おはよう……ございます」

「今日も良い天気ですね。畑は大変でしょう?」

「ええ……まあ」

「今日は港の方まで行ってみようと思うんですが何か食べたい物ありませんか?」

「……や、何も」