すっきりとしない感情を吐き出すように息をついて、日の当たる縁側に腰掛けていた俺は首にぶら下げた小さな巾着を衿から取り出す。


風呂に入る時以外はずっと肌身離さず身につけているそれは、あの頃に比べて大分くたびれていた。


あいつから任された、総司の御守り。
総司の……形見。


今もまだ最後に見た総司の姿がありありと目に浮かんで、胸が苦しくなる。


総司はどんな最後を迎えたのだろうか。
追われゆく新選組の中で辛い思いをしていなかっただろうか。


あいつは、約束通りちゃんと総司の側でそれを見届けたのだろうか。


もう確認することの出来ないそれが、酷くもどかしくて辛かった。



死んだことになっていると知った時、俺はもう京に居てはならないのだと思った。


せめて少しでも馴染みのある土地へと東に下り、暫しの放浪ののち、横浜に辿り着いた。


此処には俺を知っている人はいない。
俺もまた此処に知り合いなんていなかった。


一からか始めれば良い──そう思っていた筈なのに、過去を口にすることさえ出来ないというのは実際想像以上に淋しくて。


あの賑やかだった毎日がまるで嘘のように、俺は口数の少ない男へと変貌していた。