気持ち良かったのかと聞かれても、あの時は正直それどころじゃなかった。
いつだったか夜の逢瀬で口付けを交わしていた時にそのまま先に進まれそうになって。
いつも以上のその強引さが怖くなって、慌てて突き飛ばしただけなのだから。
祝言まではとお願いしてからは痕をつけてくることくらいはあっても、それ以上のことはしてこなくなった。
だから本当に疚しいことなどないのだけれど、私一人のことでない以上、流石にそんな詳細まで語るのは憚られた。
しかしながらそれをどう取ったのか、するりと覆い被さってきた山崎はそのまま首に舌を這わせる。
私だってあの頃のままじゃない。
もう突き飛ばしたりなんてしない。
寧ろその感触の心地よさについ体が跳ねてしまう。
音を立てて吸い付く唇。
再び襦袢の下に滑り込んでくる指。
胸を包む掌は温かく、奥深くに熱を残したままの体はいとも簡単に火が灯る。
「ま……っ」
「やらしー顔して」
最後の反論も甘い口付けに飲み込まれてしまった。
いつもより長い口付け。
いつもより早急に中へと入ってきたその身体。
半ば強引なその行為なのに嫌だと思えないのは、もしかしたら最初からヤキモチだったのかも……なんて、思ってしまったから。
自分勝手で我が道をゆくそいつはいまいちその感情が見えないけれど。
私は思いの外、ちゃんと想われているのかもしれない。