いつからだろう、ふと気が付けばさっきまで地面を叩いていた雨の音は止んでいて。


大きく空いた窓の障子を開けると、外では雲の隙間から僅かな光が差していた。


昨日よりも少しだけ涼しい空気に薫るのは湿気た土の匂い。


露に濡れた庭の草木は日差しを映して輝いていて、思わず魅入ってしまった。


そんな何でもない風景を恰も特別なもののように見せるのは、珍しい丸窓がその景色を切り取ったからなのかもしれない。




「……」



振り返れば襦袢姿の沖田が布団の中で小さな寝息を立てている。起きる気配はない。


それを確認した俺は羽織っただけの長着を整え、開け放った丸窓へと腰掛けた。


こうして庭を眺めるのはいつぶりだろう。


すぐ側には沢山の紫陽花が淡く色付いていて、その柔らかな表情にどこかほっとする。


雨に洗われた空気が、心地よかった。




伊東について藤堂くんと斎藤くんが屯所を出てからというもの、目に見えて覇気をなくした沖田を気分転換にと連れ出してすぐ、俺達は雨に見舞われた。


ほらやっぱり降ってきたと少々文句を言いつつも、雨宿りがてら飯でもと言えば何の疑いもなく茶屋についてくるあたり、世間慣れしてない箱入りぶりがよくわかる。


大方幹部の連中が大事にし過ぎたのだろうが……。


兎角、予定にはなかったことではあるけれども、結局そういうコトになるのは押しに弱いこいつも悪い。