熱に包まれればもう、何も考えられなくなった。


触れ合う熱に汗ばんだ肌。
部屋に響く湿った音と彼女の嬌声。


それだけを感じて、彼女を貫く。


目の前の餌に食らい付く獣のように何度も、何度も。


この腕の中から零れ落ちてしまわぬように、逃げないように。


その身体に、俺を刻む。




「は、じめ……っ」



けれど俺を呼ぶその声に一瞬、あの人の姿が脳裏を掠めて。


こんな彼女をあの人も知っているのだろうかと思った瞬間、一段とこの行為が激しくなった。


その目から零れた涙すら舐め取って、身体だけを動かす。


もう、止まらなかった。



一気に快楽が上り詰める。



世界が、白む。










なのに、刹那。


酷い虚無感に襲われたのは、彼女の心がいつまでたっても手に入らないものに思えて仕方なかったから。



春夢。



そんな考えを掻き消すように、俺は腕の中にいる彼女の身体にすがり、きつく、抱き締めた。