「……ふ」



腕の中で彼女が身を捩る。


遠くから焦がれるだけだった彼女に、今初めて触れている。
ただそれだけで熱が加速した。


角度を変えて重なる唇から時折漏れる彼女の吐息に、彼女もその身に俺を感じている──そう思えばまた、身体の芯が疼く。


少しの時すら惜しくて、口付けたまま簪を抜き、乱雑に帯をほどいた。


シュルリと鳴った衣擦れの音すら俺を煽って、指が急く。


けれど、襦袢すら脱がずに滑り込ませた指先に柔らかな膨らみが触れた途端、絡んだ舌がほどけて、唇が離れた。



「っ、一くん……っ」

「一だと言ったろう」


敏感に肩を竦めて後ろに逃げた彼女の腕を掴み、少々強引に引き戻せば、はだけた襦袢からその身体が露になる。


恥ずかしさからか耳まで赤くし、未だ腰の引けた彼女の腰に手を回してその身を寄せる。


羞恥に堪える彼女の嬌声が聞きたくて、必死に肌に唇を這わせた。




滑らかな肌が、徐々に湿り気を帯びてゆく。


行灯の明かりと影に縁取られた身体が酷く艶かしくて、何度も口付けては赤い花を散らした。


己の印を。


熱を孕んだ眼。
彼女の中に触れれば、上擦った声音が俺の頭を揺さぶる。


微かに残る恥じらいの中に見える確かな悦楽。


初めて触れた女としての彼女に、俺はただ本能のままその身体を貪った。