にこにこと目を細める沖田に、ついと横を見れば口を尖らせた市村と目があって。
「……どうします?」
「しゃあないからおこちゃまに全部やる。俺は飴ちゃんでも食うとくさかいや」
結局、こういうことになる。
「早よ食べ」
まぁ特に汁飴に執着があった訳でもない。部屋で顔を合わせる度に突っ掛かってくるこいつとの決まったやり取りに息を吐いて終止符を打つと、大人しく布団の隣に腰を下ろした。
「……あれ、これ」
温かな湯飲みにふーふーと息を掛けて口をつけた直後、沖田が意外そうに中を覗く。
「ちと湯足して溶いたんや。その方が飲みやすいやろ」
相変わらず食の細い沖田は、干菓子のような乾いた物はあまり口にしなくなった。
元より細身のそいつ。
一日の大半を部屋で過ごし、日差しを受けないその体は透き通るように白く頼りない。
故に皆、直接顔には出さないものの、少しでも食べさせねばと必死だった。
「はい、有り難うございます」
しかしながら当の本人はそんな心配などまるで気づいていないかのようにのんびりとしていて。
近頃めっきり素直になったそいつはにこやかに満面の笑みを浮かべてみせる。
何かを悟ったようなその変化はあの藤堂くんの一件以来。
『生きているなら』
そう言って泣くのを堪えて笑った沖田は、反動のようによく笑うようになった。
局長のように、それに痛々しいと眉を潜める人間もいるが、決して無理をしているようにも見えない俺は、これで良いのだと思う。