昨夜降った雪が碁盤の町をうっすらと白く染めたその日。


草木の上に微かに残る雪を眺めながら、俺はいつものように沖田の部屋へと向かっていた。


先日下った伏見鎮撫の命により移った伏見奉行所の端にあるその部屋にある気配は二つ。


沖田と、市村だ。



「おー汁飴(水飴)もろてきたでー」

「げ、来た」


障子を開けて顔を覗かせた俺に沖田より早く声をあげたのは市村で。


明らかに嫌そうに顔を歪めるそいつは相変わらずムカつく餓鬼だった。



「安心せぇ、自分のはないさかい早よ出ていき」

「沖田さんのお世話は俺の役目ですもん。山崎さんこそそれ置いたらさっさとお仕事に戻られては如何ですか?」



少し前に副長にそう頼まれたそいつは、一緒に過ごす時間が増えたからだろう、以前に増して沖田に懐いていた。


藤堂くんを彷彿とさせるその気質には話す度頬が引きつって仕方ない。


乳離れの出来ん餓鬼が……。



「もー大人げないですよ。鉄くんも、私のを半分あげますから三人で食べましょう?」



それもこれも沖田が甘やかすから余計に増長するのだ。



「阿呆、お前のやってどーすんねん。お前は食え」

「そーですよ、沖田さん甘いの好きでしょう?沢山食べないと」

「じゃあ二人で分けてくださいね」