確かにあれは女で。
その消えることのない事実は常にあいつについて回る。


仕方のないこととはいえ、それで己が望む生き方を否定されるのはあまりに無理矢理ではなかろうか。


「生まれた時から妙な枷嵌められて真っ当な女子の生き方も出来へんかったんや。可哀想や思うんやったら最後くらい好きにさせたれや」


確実に死へと近付いているあの体。


もうこうなった今、俺達に出来ることはそれくらいしかないのだから。








紫煙の臭いに淀んだ部屋で互いに黙って暫く。
表の壁にでも張り付いているのか、蝉の声だけがその間を埋めるように五月蝿く鳴り響いていた。



「……随分ベタ惚れしたもんだな、てめぇも」


ぼりぼりと首の後ろを掻きながら、副長が苦笑いを溢す。


「かいらしろ?」

「全っ然可愛くねぇ。寧ろ胡散臭ぇ。何か妙なこと企んでんじゃねぇだろな?あいつの家の家督は姉婿が継いだぞ」

「酷いなー俺そないな男に見える?」

「すげー見える」


軽口を叩き、半目で俺を見据えたその人は、それでもすぐに眉を潜めて目を逸らす。


未だ揺れる感情は当然で。
それでも副長は何かを振りきるように首を振り、静かに息を吐いた。



「……あの体だ、帰れとは言わねぇ。だが、これからはもう隊務に立たせることは出来ねぇからな」