飼い猫と、番犬。【完結】



「ええねんて、俺が避けんかっただけやし」

「でも」

「ちゅーか俺のことより自分やろ。大丈夫なんか?」


副長のあの様子、沖田の袖についた血痕。何があったかは聞かなくても大体想像がつく。


これまでは熱や咳を繰り返しながらも一応の小康状態を保っていた沖田だったが、その間良順に言われていたことがあった。


一度でも血を吐くことがあればもう治る見込みはない、と。


それは刻限が迫っている証で。それ以上は決して無理をさせるな、と。


只、残る刻を大切にしてやれ、と。



勿論、俺とて楽観していた訳じゃない。


これまでと然程変わらぬ日々を過ごしながらも緩やかに弱っていくこいつを、誰よりも近いところから見ていた。


いつかこんな日が来るのだろうと薄々思ってはいた。


だから、俺は驚かないと決めていたのだ。




「……大丈夫ですってば。と言うかあれですよ、こんなこと初めてだったのにまさかあの人に見られるなんてびっくりですよね。本当、私ってつくづく運がない……」


ふ、と微かに自嘲染みた笑みを浮かべた沖田は、じっと手元を見つめて動きを止める。


強がりで負けず嫌いで、実は人一倍脆いそいつ。


副長のことがあったからこそこうして気丈に振る舞っているのだろうが、本当なら一等に辛いのは、こいつだ。




「……奏」