飼い猫と、番犬。【完結】


そんな副長の背を見送っても場に残る空気は然程変わらない。


寧ろ鮮やかな怒りが消えた分、それは輪郭を失ったかのように微妙な重苦しさを漂わせた。



「……その、すみません」


おどおどと此方を向いた沖田が眉間に泣きそうな皺を寄せて己の袖を握る。


副長に知られたことを言っているのか、あの人に殴られた俺のことを言っているのかはわからなかったけれど。


「謝らんでええ、何も悪いことあらへんやろ」

「でもっ」

「それより俺らも一先ず離れんで、流石にこんまま飯は食えん」


副長がいなくなった今、周りの連中の視線を集めるのは俺達二人で。いくらなんでもこの空気を背負ったまま、何もなかった様に飯を食うことは出来なかった。


それに。


今日の稽古でのこと、その袖に滲む赤い染みのこと。


これの体調を考えても、今は呑気に朝餉など食べている場合ではない。


「来(キ)ぃ」


あ、と小さく声を上げた沖田の引き来た道を戻る。


さっき出たばかりの部屋はいつもと変わらぬ雑多な様子で、俺達を迎えた。




「体はどうや?」

「……今は何でもないです」


一先ず微熱のある沖田を布団へと押し込む、が。


「すみません……私の所為で」


相変わらず自らを責めたがるそいつは、布団に座ったまま手元を見つめ、悔いるように顔を歪める。