飼い猫と、番犬。【完結】


掴み上げられた衿から、小刻みな震えが伝わる。


沖田の過去を知る副長だからこそ、今の言葉の意味がよくわかるのだろう。


けれどだからと言ってそれを簡単に認めることが出来ないのは、きっと差し迫る現実が、沖田の袖に滲んでいるから。



……それで、か。




「俺は頼まれた覚えはないで。言うたやろ、これはあくまで俺の意思や」


胸倉を掴んだまま動かない副長の腕に触れると、それは思いの外簡単に外れ落ちた。


だらりと腕を下げ、その人はただ己に触れる沖田の手を見つめて固まる。


その胸中に渦巻くものは如何ばかりなのか、多分俺にはずっとわからない。



「俺は潔ぅ生きる奴が好きやねん。せやさかい自分にもついてこ思た。そんな好きに生きとる奴代表みたいな人間が他人の生き方にいちゃもんつけるとかいっちゃんしたあかんことや思わん?」

「……五月蝿ぇよ馬鹿」

「っ、ごほっ!」


少しだけ落ち着きを取り戻したらしい副長のそこそこ本気の拳が胸に飛んできて。


流石の俺もそんな最強の突っ込みには少々噎せる。


「……少し、考えさせてくれ」


それでもやはりすぐに頷くことは出来ないようで、沖田の肩を掴んでその身を剥がすと、誰とも目を合わすことなくこの場を去っていく。