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朝の稽古を終え、部屋で着替えを済ました俺は、五月蝿い蝉の声を聞きながら朝餉を取る為広間へと向かっていた。
いつもなら副長室にて一日の隊務の内容が伝えられるのはそのあとのことで。
だから食事を取る場所も違うその人がいつもと違う気配を纏い、真っ直ぐに此方に向かって歩いて来るのを見て、俺は何となく事の次第を理解した。
いつにも増して近寄りがたいその気迫に、近くにいた隊士達も恐る恐ると目を向けている。
当の本人がいないことが少しだけ気になりはするものの、どすどすと足を踏み鳴らして近付いてきた副長がそのままの勢いで俺の胸倉を掴むから、一先ず俺は目の前のその人を見上げた。
「どういうことだてめぇ、何で黙っていやがった」
静かな怒りがピリピリと肌を刺す。
この人がここまで感情を露(アラワ)にするのは初めてだった。
が、何のことはない。この人にとってあいつは今でも特別で。こうなることくらいちゃんと始めからわかっていたのだから。
「あかんか?気付かんかったんは自分や」
「っ、てめぇ!」
刹那。頭が揺れ、体が床へと叩きつけられる。殴られた弾みで切れたのか、じわりと口内に血の味が広がった。
無論避けるつもりはなかった。
俺達のただならぬ空気に近くにいた連中が只々固まり、視線を寄越す。


