「っ、おま……っ」
だけどいきなり凄い力で肩が掴まれてはっとなる。
強引に振り向かされた体は尻餅をつき、けれど土方さんはそれを気にすることなく一直線に私の腕を掴んで固まる。
僅かに赤く染まった私の袖を、凝視して。
「……お前、これは……」
もう言い逃れなど出来なくて。
でもその目を見るのも怖くて顔が上げられない。
何より私自身が今の事実にまだちゃんと頭が回っていなかった。
何か言わなければと開いた口からは何の言葉も紡げなくて。
ただ、震える手で加減なく握られた手首が酷く、痛かった。
「……あいつは、知ってるんだな」
この人は賢い。
沈黙に全てを理解したのか、静かに発せられたその声は明らかな怒りが滲んでいて、ぞくりと肌が粟立った。
ここに来て初めて見るそんな土方さんに少しばかり驚きながらも、既に私を見ていないその人の矛先に、焦りが生まれた。
「お前は部屋に戻ってろ」
「待っ、土方さんっ!」
漸く動き出した頭はその人を呼び止める言葉も浮かばない。
それどころか声をあげて立ち上がろうとした瞬間、再び溢れた咳に遠ざかるその人すらすぐには追えなくて。
そんな自分の不甲斐なさに奥歯を噛み、未だ鉄臭い唾を土の上に吐き出すと、井戸の縁に掛けた手にぐっと力を籠めた。


