「っ、こほっ……ごほっ」
咳を溢した私に土方さんが何かを言いかけたけれど、次々に続くそれにその人は言葉を止めた。
同じ病を患ったことのある土方さんだからこそ、こうならないようにと避けていたのに。
不味い。
そう思うのに一度堰を切ったそれは中々止まらない。
幾度となく続く咳に身体中が熱くなって、浮かんだ涙に視界が滲んだ。
「っ、すみ……」
「良いから黙ってろ」
咳き込む私の背に大きな手が触れる。
凄く……凄く久し振りに触れるような気がするその手に擦られても尚、咳は続いた。
袖に口を押し付け少しでも音が漏れないように。
僅かにしか入ってこない空気に苦しさが増して、頭が破裂するんじゃないかっていうくらいに熱を持つ。
そんな時だった。
違和感を、覚えた。
「……大丈夫か?」
漸く咳が収まった頃、井戸の縁に片手を掛けしゃがみこむ私の背に触れたままのその人が言った。
「……ええ」
上がった呼吸の合間になんとか返せたのはそれだけで。
髪に隠れたまま、口許に押し付けた袖でぎゅっと唇を拭う。
それでも口内に残る違和は消えなかった。
そこに広がるのは初めて山崎に無理矢理口を吸われた時と同じ、味。
だけどあの時と違うのは、今回は間違いなく自分の血の味なのだということで。
突然の現実に、一瞬頭が真っ白になる。


