……冷たい。
不意に額に触れた感触。
すぐ側に誰かの気配があるのを感じてゆっくりと瞼を開いた。
「起きたか」
「……やまざ、き」
起きたばかりで声が掠れる。
瞼に掛かる濡れた手拭いを握り、表情のないそいつから視線を移して見た天井は見慣れたいつものもので、此処が自分の部屋なのだと気付いた。
「ど……して」
貴方が此処に?
気が付けば辺りはもう薄暗く、部屋には明かりが灯っている。
少なくともあれから一刻近くは経っていることに驚きながらも、寝落ちただけの筈がこうして布団に移され看病されているのかがわからなくて。
取り敢えず起き上がろうと肩を浮かすと、ええから寝とき、と山崎に阻止された。
……もしかして、あの声はこいつだったんでしょうか……。
「……副長はんがな、慌てて呼びに来たんや」
「え?」
淡々と語られるその事実は意外で。
でも、どこかストンと受け入れられたのは、最後に聞いたあの声が、やはりその人のものだったからだ。
『……総司、いるか?』
あれは夢じゃなかったんですね……。
まだ少しぼんやりとする頭で記憶を辿る。
もしかしなくても、返事もせず畳んだ布団に倒れるようにして被さり寝ていた私に驚いて山崎を呼びにいったのだ。
慌てたあの人を見たかったな、なんて思わずくすりと笑ってしまったあと、小さな疑問が残った。
何しに来たんでしょう……。