ふと気が付けば温もりを感じる程度だった陽射しも徐々に熱を帯び始め、巡察に町を歩けば屯所に戻った頃には額にもうっすらと汗が滲む季節になっていた。


それなのに未だ襲う淋しさに、部屋に帰った私は隅に畳んである布団に倒れ込むようにして顔を埋めた。



「はぁ……けほっごほっ」


……元気、なんでしょうか。


頭を占めるのは春に此処を離れたあの二人。


『すまない』
『ごめんね』


そう言って、其々の口から出たのはまたも伊東さんの名前で。


どうしても彼について行きたいのだと言われれば、同じ行動をとった経験のある私には二人を止めることなんて出来なかった。


それでも年も同じでずっと側にいた二人が同時にいなくなるなんて微塵も思っていなかった私は、未だに心が落ち着かない。


二人だって悩んだ筈だ。
でないとあんな辛そうな顔なんてしない。


なのに、どうしてあんなぎりぎりまで何も言ってくれなかったのかと、自分勝手な不満すら湧いてしまう自分が嫌だ。



「……当然ですよね」


今思えば確かに二人が伊東さんといるのを何度も見た気がする。


その間、私はといえば山崎といることが多かったのだから、話が間際になったのもある意味仕方ない。


それに、これは平助なりのけじめなのかもしれない。


そう思えば私に文句など言う資格なんて、なかった。



……あいつ、いるかな。