飼い猫と、番犬。【完結】

その声が微かに沈む。


恐らく斎藤くんが此処にいる理由の一つであり、一等に大切にしているのはあいつ──沖田だ。


あれの病を知りながらも尚俺と同じくあれに手を差し伸べる事を選んだ唯一の人間。


恋慕の情で括るにはあまりに高潔な思いを持つ彼も、伊東が動き出した今、これからの動向次第ではあれの側から離れなければならなくもなるだろう。


先に起こる事に確約はない。


離れる事に心配も不安もあるのだろう。


何より理由を話せないだけに沖田がそれをどうとるのか。間違いなく快くは思わないだろうあいつの反応は想像に容易い。



「まぁ無理はさせんつもりやけど自分もあれに無茶せんようしっか教えといたって」

「……承知した」


しかしながら俺達に出来るのはその程度、以上も以下もないことは彼もきっとわかっている筈だった。


「ほな俺はそろそろ戻るわ」


もう夜も遅い。
あまり長居する時ではないと、ぼそぼそと続けた会話を切り上げ立ち上がる。


「山崎」


すると意外にも呼び止められて。


僅かに振り向き見下ろした視線の先で、初めて目にした悲しげな眼がじっと、俺を見上げていた。



「……総司を連れて、どこかへ逃げてくれないか?」