「……おまっとぉさん」
夜の闇を滑り落ちるように部屋に降り立った俺にもその青年は身動ぎ一つしない。
綺麗に敷かれた空の布団を一瞥し、その隣に腰を下ろして壁に凭れかかると、同じく壁に寄りかかって目を閉じていた斎藤くんがゆっくりと瞼を上げる。
「……出るつもりだ」
「はいな」
彼は生き餌だ。
淡々と物事をこなし、あまり感情が表に出ない斎藤くんは隊内でも中立な立ち位置に思われている事が多い。
それを副長が利用したのだ。
時折開かれる講釈に顔を出させて少しずつその懐に入り込ませた。
此度の件も表向き謹慎は嘆願によりとなっているが、実際は副長が局長に謹慎を口添えした。
局長すら知らない撒き餌。
まんまと食らいついてくれた伊東にはこれからゆっくりと腹の中で飼ってもらおう。
突然だったこの一件であるが、それでもこうして俺を待っていた斎藤くんはやはり頭が切れる。
敵にはまわしたくない人間だ。
「……総司は?」
言葉少なに話をしたあとに漸くその名を出す真面目さは彼らしい。
「俺んとこで寝とる。流石に隣で話す訳にもいかんやろ?」
「……ああ」


