飼い猫と、番犬。【完結】



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「……お前、影だろう?」



ふむ、やっぱこん人は察しがええ。


腕試しを終えて連れてこられた局長室で己の流派を伝えると、副長の片方が不敵に片方の口角を上げた。


あまり長くない髪を一つに結わえたその土方と言う美丈夫は、上座に座る人の良さそうな近藤局長よりもずっと局長らしい威圧感を放っている。


その切れ長の眼の奥には潔いまでの貪欲さが滲んでいて、先程から見るに同じ副長である山南という男よりも此処での力は強そうだ。


恐らく先の腕試し、そして流派から答えを導き出したのだろう。


思ったより物知りさんやん。


「ようお分かりで」

「歳? 何のことだ?」


声に出して問い掛けた局長も、視線だけを送る山南副長も、やはり俺達の会話の意味を理解しかねているらしい。


土方副長のことを歳と呼ぶ局長からして、この人達の付き合いはそれなりに長いと思われた。


まぁ初めておうたに近い人間の目の前で組織のいっちゃん上が下の人間そない呼ぶんもどうかと思うけどな。


黙って座っていれば強面の局長は想像以上に人間臭いらしい。それは上に立つ者として利ともなるが、仇(アダ)ともなる。


感情や人情は時として人を纏めるのに邪魔になるからだ。


もしかすると、だからこそ補佐たる立場の副長という人間が二人もいるのかもしれない。


実質此処動かしてんのは間違いなく歳ちゃんぽいけどな。



「……で、お前はなんでまたうちに来たんだ?」