夏の盛り真っ只中な朝。


男ばかりの稽古場は今日も籠った熱気に汗の臭いが充満していた。


昨日までいなかった吉村さんが部屋の隅で朝から一人満身創痍な様子でいるのに対し、同じく今日から稽古に加わった山崎はにこやかに棒術用の棒を振り回して颯爽と組んだ相手を打ちのめしている。


夜、延々付き合わされたこっちは立っているだけでも足が震えるというのに、あの細身の体のどこにそんな体力が詰まっているのか全く以て謎だ。


……まぁそりゃただ痩せているだけという訳でもないですけど……。


逞しいとはまた違うかもしれないが、引き締まり均整のとれたその体はいつ見ても綺麗で、少し羨ましい。


……って私は何を考えてっ!



「ご機嫌だね、あの人」

「うわっ!?」


久々に会えた恋仲に不覚にも気が緩んでいたらしい。
ぽわんと浮かんだ昨夜の記憶を掻き消す間もなく隣に現れたのは平助で。


「……見つめ過ぎ」


思わず跳び跳ねてしまった私は呆れた顔で額をつつかれた。


ちょっぴり気不味い。


「……元気だなぁと思って見てただけですからね」

「まー確かに体力だけは馬鹿みたいにあるよね」


未だ熱の冷めない頬をぽりぽりと掻きながら視線を逸らす。


すっかり普通に話せるようになった平助だけど、あいつの話題となると話は別だ。


違うとはわかっていても責められているような気がして、申し訳なくなる。


その視線全てがどうしてもいたたまれない。