飼い猫と、番犬。【完結】



────




「ま……待ってくれ山崎……」



吉村が震える手を俺へと伸ばす。


よろよろとした動きはまるで刀で斬られた直後のようだが、俺達は単なる山登り中だ。


確かに、道の両側に並ぶ木立に多少陽は遮られているとはいえ、真夏の暑さは容赦なく体力を奪っていく。


安芸を発って早七日。
上ったり下ったりの山道に疲労は溜まる一方。


朝から晩まで歩き詰めの毎日だ、俺もそれなりに疲れはある。


が、こいつはあまりに体力がなさ過ぎる。



「あんなぁ、自分どんなけ休んだら気ぃ済むねん。さっき休んでからまだ半刻程度しか経ってへんやないかい。こんままやったら次の宿場に着く前に陽ぃ暮れてまうわ。もうちょい気張れ」

「で、では水だけ!水だけ飲ませてくれ」


けれどあまり無理をさせて倒れられでもしたら迷惑を被るのは俺で。


「……次からは歩きながら飲みや?」


仕方なく街道から僅かに外れた草むらへと腰を下ろした。



こん調子やったら京までもう暫くかかんな……。


向こうでとった情報は粗方飛脚にて伝えてある。京を出て約半年、今更急いで帰る必要はないといえばない。


しかしながら男二人の田舎生活は中々侘しくほとほと飽きた。


加えて今のもそう、己の配分を崩されるというのは思いの外苛々する。



一人の方がよっぽどええわ……。