やっと口を開いた一くんが袂から取り出した紙包み。


私にしかわからないくらいの微かな笑みで渡されたそれを有り難く受け取ったところで、平助が声を荒らげた。


その手には同じような紙包みが一つ。


「……総司がまた咳をしているからだが?」

「俺もだよっ。もーなんで被るかなぁ……まぁ良いや、ていうことでこれもあげるよ」


不満そうに膨れた平助が、既にある包みの上にそれを乗せる。


一くんは狡いとぶつぶつ良いながら拗ねた平助に、結局一緒だろうと呆れる一くん。


計らずも揃ったという二人の優しさに、どうしても頬が緩んでしまう。



「嬉しいです。二人とも有り難うございますっ」



私だって学習する。
もう不用意に誰かに触れたりはしない。


だけど男だとか女だとかそういうややこしいことを取っ払っても、やっぱり私はこの二人が大好きで。


そんな思いだけは伝わればと、精一杯の笑顔で返した。


「……や、うん、喜んでくれたらそれで良いよっ。ね?一くん!」

「……ああ。兎も角早く治せ」


拗ねていた平助もはっとしたように笑顔になって、一くんもいつもよりちょっとだけ分かりやすく目を細める。


どうしても殺伐としがちな今の暮らし、ほんの少しだけ昔に戻ったような錯覚に陥って思わず泣きそうになる。


今もまだ三人でこうしていられることが本当に嬉しかった。


どうも最近駄目ですね、私……。




「おいおめぇら、んなとこ突っ立ってっと誰も通れねぇだろうが」