すっかり妙な感情を植え付けられてしまっている自分に溜め息を吐いた。


何となくあいつに負けた気がして気に入らない。


淋しくなんてないですからねっ。あんなのついてたら町も歩けませんもんっ。


溜め息の最後に溢れた咳に唇を拭い、また気合いを入れ直す。


近藤さんがいない今、組長たる私が腑抜けている訳にはいかないのだ。



「さぁもう一踏ん張りしましょうか」



まだ陽は天頂を少し過ぎたばかり。組の皆に言う体でそう自分に言い聞かせ、腰に下がる重たい刀を握った。






「あ、お疲れ総司っ」



巡察の報告を終えて部屋に向かっていると、前から平助と一くんが歩いてきた。


私と距離をおいてた時は一くんをも避けていたみたいだけど、最近はまた二人でいるのをよく見かける。


やっぱり男同士は良いなぁなんて、ちょっと羨ましい。



「おかえり。今日はどうだった?」

「まぁ特に大事はありませんでしたよ」


食い逃げと賽銭泥棒と喧嘩の仲裁。平和と言えば平和だ。


「二人はずっと一緒に?」

「ううん、今さっきそこで会っただけ。それでね総司、これ」

「飴だ、やろう」

「わぁ良いんですか?有り難うございます」

「って、何で一くんも飴持ってんのさ!?」