飼い猫と、番犬。【完結】





「……嫌やて言うたら?」



さらしの上ギリギリに人差し指の腹を滑らせる。


豊かであるとは言えないものの、確かな柔らかさをもって指先に吸い付く。


暗い明かりがその体に濃い影を作り、いつになくそいつに女を纏わせていた。



「山」

「俺、これでもさっきまで結構むかついててんけど」


身動きのとれない状況。
俺が口にした静かな怒り。


涙の膜を張った目が焦りに揺れた。


手触りの良い頬についた赤い傷口を軽くなぞると、沖田はきゅっと目を閉じ肩を竦めて。


明らかに怯えを滲ませたそいつに、今度はそっと、その痛々しく変色した腹に手をやった。



「俺のもんに手ぇ出すような輩死んで当然やろ」



はだけた胸元に唇を寄せると、沖田はぴくりと小さく体を揺らす。


さらさらと柔らかい肌だった。


初めて見たその体は頼りない程に細くて、男として生きるにはあまりに小さな肩だった。


生家での扱い、人斬りの業。


その肩に一体どれだけのものを背負ってきたのか。


そんなこいつを捌け口にしようとしたあいつらにまた、ふつりと怒りが湧く。


女であると知らなかったとはいえ、ああいう穢い輩は最も不愉快とする人種だ。


沖田の言う通り、あんなのは此処には要らない。


この世の何処にも。


そんな奴等が触れた肌。


それがどうにも不愉快で、その痕跡を消すように唇を這わせる。