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普段はあまり部屋に明かりは灯さない。
故に行灯すらなく、ただ火皿に灯芯を浸しただけの暗い明かりがぼんやりと空気を揺らしている。
流石に今日ばかりはそれだけでは明るさが足りず、そこらにあった紙を適当に折って火皿を囲う様に立たせて行灯の代わりにした。
この時刻、すっかり冷めた風呂は使えず、一度沖田を置いて部屋を出た俺は、盥(タライ)に湯を張り持ってきた。
部屋の中では僅かに白みを帯びた明かりが、入ってすぐに座る沖田の姿を浮かび上がらせていた。
乱れた長着は建物に上がる際に砂を落とすついでに整えさせたものの、所々にある擦り傷がなんとも痛々しい。
けれどまぁそれでも泣く事もせず男に唾を吐き掛けたこいつは、女だてらに天晴れだ。
先程のその光景を思い出した俺はふと口許を緩め、借りてきた猫よろしく居心地悪そうに小さく正座する沖田の側に膝をついて、にこりと笑みを深くした。
「ほれ、拭いたるから脱ぎ」
「ばっ!それくらい自分でやります!」
「……つまらんのー」
「良いからあっち向いててください!」
つまらんってなんですか!、とぷりぷりしながら俺に後ろを向かせ、自らも背を向けた沖田は気付いていない。
嫌ならまず自分の部屋で着替えまで済ませてから来たらいいという事に。
……見てくれ言うとんのとおんなじやん。なあ?


