飼い猫と、番犬。【完結】



……山崎?


その名にとくりと心の臓が跳ねる。


はっと転がる男を見れば、いつかのように首の後ろに苦無が刺さっているのが見えた。


突然の事でさっきは気が付かなかったけど、よく見ると他の二人も同じく苦無を生やして事切れている。


どう見ても平助の仕業じゃないのは明らかだった。




「……もっと早よ来いや呆け」



闇から音もなく現れた山崎。
その目はじとりと細められて平助を睨んでいる。


「……だから、悪いと思ってるよ」


その会話に私だけがついていけなくて、目をしばたたかせた。


どうして二人が此処にいるのか。


と言うか、話しぶりからして山崎は平助が来る前からいたように聞こえるのは気の所為なのだろうか。


意外な組み合わせの二人。
どっちに何と言えば良いのかわからなくて上手く言葉が紡げない。


それでなくとも色々あった今宵。忙しなく移ろいだ感情にまだ少し頭がついていかなかった。



「総司」


そんな私から平助がそっと身を離し、気不味そうに顔を背けながらも着ていた羽織を掛けてくれる。


緩んださらしにはだけた長着、思い切りずれた袴と、今更ながら物凄い恰好だと気付いて、身を縮こまらせた。


「あ、りがと……」

「ううん、遅くなってごめん」