その言葉に体が強張る。
そりゃこれだけ雑に扱われたら着物が乱れたって可笑しくない訳で。
はっと開いた目に飛び込んできたのは、衿を掴んだまま目を瞠る男の顔。
その目はさらしを巻いた胸元へと注がれていた。
「お、んなってなんだよっ!」
「っ」
怒りに満ちた声だった。
衿を掴むその手が震えていた。憎しみに染まった眼が真っ直ぐに私を睨み付けていて、ここにきて漸く僅かな恐怖を覚えた。
年下の、しかも女が自分よりも上に立っていたのだ。
本来なら道場すら入ることが出来ず、不浄とすら見なされる女が。
男をたて、その後ろをただ黙って歩かねばならない女が。
こいつらみたいな男であることを振りかざしてでしか矜持を保てないような偉ぶった連中にとって、それは決して許されないことだった。
「どういうことだてめぇ!」
「もしかして上は全員知って……」
「違」
「ふざけんな!」
皆にまで迷惑をかけたくないと否定しかけて、地面に叩きつけられる。
頭が揺れて、目の前が一瞬白く飛んだ。
山崎の時とも、平助の時とも違う力だけの乱雑な扱い。
欠片の優しさも感じられない手が、乱れた着物の衿を強引に開いた。
「二度と俺達の前に立てなくしてやるよ」
「や……っ」


