最後のうどんをちゅるんと吸い込み首を傾げ、言いにくそうにする彼に先を促す。



「……山崎さんと喧嘩でもしたんですか?」

「ぶっ」


そして即後悔した。


な……なななっ!?



「だ、大丈夫ですかっ!?」


咄嗟に口を押さえたのは良いものの、飛び出しかけた色々で痛いやら苦しいやら大変だ。


それをどうにか飲み干し暫く目一杯噎せたあと、何とか喋れるまでに回復した私に山野さんが申し訳なさそうに眉を下げた。


「すみません、まさかその、こうなるとは思わなくて……」

「や……まさかあの人の名が出てくるとは思っていませんでしたので」


しかも喧嘩……そっか……周りにはそう見えるんですね……。



確かに私は未だにあいつを避け続けている。


だって、物凄く顔を合わせ辛い。


単純に照れる……だけじゃない。


あの翌朝。


起きた途端腕の中にいた私は一瞬状況が飲み込めなくて、次にハッと思い出したのは前日の夜の事で、知らぬ間に同衾していたその事実に頭が真っ白になった私は、直後あいつを蹴飛ばし……逃げた。


よくよく見れば襦袢も大して乱れてなかったし、湯文字(下着)もそのまま。


何かをされた訳ではないようで少しばかり安心したのも束の間。


そのあと顔を合わせた山崎のどす黒い笑みに色々と恐怖を覚えた私は、結局素直に謝ることも出来なくなって──今に至る。