「あかん、そろそろほんまに風邪引くわ。戻んで」


ぽん、と背を叩いて声をかけた……が、何故か返事がない。


「そー」


直後名前を呼びかけて、はたと気付いた。


寝とる。


と。



……よぉ今のまに寝れたな。童かい。


その寝付きの良さにある意味感心する。


それだけ心を許したのか、はたまたただ単に眠かっただけなのか。


月の位置からして日が変わるか変わらないかの頃合い、普段ならもうとっくに眠りについている時分。仕方ないと言えば仕方ないけれどもだ。


これはあまりに無防備過ぎやしないだろうか。



「……襲ってくれっちゅーこっちゃろか」


そう独りごちてつんつんと乳をつついてみても、沖田は穏やかな寝息を立てたまま。


……反応ない女抱いてもなんもおもろないしや。


溢れ落ちた溜め息に寂しく頭を掻いた。



「しゃーないなぁーもー」


人の肩を枕に気持ち良さげに眠る沖田を叩き起こす気にもなれなくて。その体を横向きに抱え直して屋根を降りる。


部屋に連れていってやっても良いのだが、このまま返すのもどこか癪。故に向かう先は自然と俺の部屋となる。


すっかり冷えた体。
一人よりも二人の方が布団もすぐに温まる。


無意識のクセに横になった途端擦り寄って来る沖田は中々の鬼だ。


次は寝かさへんさかいな。


一方的に口付けてその約束とする。


そして少々悶々とする意識に蓋をするように、俺は無理矢理瞼を閉じたのだった。