淋しい、そう思ってしまうのは私の我が儘だ。
あの真剣な想いを受け入れられない以上、私には今の平助には何もすることが出来ないのだから。
『総司の髪好き』
そう言って髪を乾かしてくれたあの頃が遠い昔のように思える。
……もう、戻れないんでしょうか。
答えは、出ない。
ぼぅっとそんな事を考えながら髪を拭きあげた私は、絡んだ髪を櫛で梳き流し、置いてあった鏡を覗き込んだ。
簡単に分け目を整えると、無意識に目線が首筋に落ちた。
すっかり何もなくなったそこ。
それなのに柔らかな感触と痛みが唐突に甦って、私は思わずぎゅっと掌を押し付けた。
あの、馬鹿。
あんなふざけた山崎の悪戯の所為で、首にさらしを巻く羽目になった私は、怪我だと思った松本先生に無理矢理見られて死ぬ程恥ずかしい思いをすることになってしまった。
別室で二人きりで診てもらっていたからまだ良いものの、間違いなく先生は変な勘違いをした筈だ。
私以上に真っ赤な顔で慌てた先生の顔を思い出すと、これまた羞恥に汗が滲む。
痕自体は数日で消えたのに今も不意に熱をもつそこに、長い溜め息が溢れた。
……有り得ません。