本当なら一番風呂は近藤さん達が入る筈なんだけれど、堂々と皆と入れない私が先に入れてもらってる。


本人達は全く以て気にしてない様子だったけど、私としては何だか悪くて落ち着かない。


それにやっぱり屯所で裸になるのは心許なかったし、あまり長湯しているとつい余計なことまで考えてしまいそうになる。


早く着物着よ。


頭に浮かんだ諸々を振り払い立ち上がった私は、勢いよく流れ落ちる湯を軽く手で払って、そそくさと浴室の戸に手を掛けた。





近藤さんに先にいただいたことを報告して、部屋に向かう。


幹部の部屋に近い場所に風呂を作らせたのも土方さんあたりの指示だろう。


お陰で日のある今時分でもあまり人を気にしないでうろうろ出来た。


蒸した空気を突っ切って部屋の前まで来ると、どうしても隣の部屋へと目がいってしまう。


そこの主はもう平助ではないとわかっていても見てしまう、それは半ば癖のようになっていた。


平助とは今も相変わらず。


一応顔を合わせれば挨拶くらいはするけれど、すぐに目を逸らして他所へ行ってしまう平助にそれ以上声も掛けられない。


でも、離れてみてもやはり平助に湧くのは恋慕の情じゃなくて、仲の良い兄弟を失ったかのような喪失感だった。